トヨタの先進的な次世代車の開発と、誰もが自由に、楽しく、快適で、安全に移動できるモビリティ社会の実現に貢献するウーブン・バイ・トヨタ株式会社。2018年に、前身であるトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント株式会社として設立以来、外部のパートナー企業との契約数が急増するなか、契約プロセスにおけるボトルネックを解消し、契約管理の効率化や従業員満足度の向上を目指して、契約ライフサイクル管理システム「Docusign CLM」を導入しました。

契約数の急増に伴い、従来の契約管理が限界に

ウーブン・バイ・トヨタは、ソフトウェア・プラットフォーム「Arene OS(アリーン)」、自動運転・高度運転支援技術、モビリティのためのテストコースである「Woven City」の3つを事業の柱としています。2018年の設立以来、事業の拡大とともに秘密保持契約(NDA)や委託契約、共同開発契約など、外部のパートナー企業との契約数が急増しました。これに伴い契約管理が複雑化し、処理に限界を迎えつつあったといいます。

パートナー企業と協働して開発を行っている同社にとって、研究開発を進めるうえで重要な出発点となる「契約」。同社ではこれまで、契約を締結する際には、開発部署のエンジニアがフロントに立ち、契約先となるパートナー企業と契約内容を調整の上、オンラインフォームを介してLegal & IP部門に契約内容のレビュー依頼を行っていました。一方、Legal & IP部門では表計算ソフトを使って各依頼を台帳管理していました。Global Operations、Legal & IP部門のシニアマネージャーである木下 裕介氏は、これまでの課題について次のように話します。

「以前のプロセスは手作業が多く、台帳管理されたデータも正確性や整合性が十分に確保できているとは言えない状況でした。そのため、必要な契約をすぐに見つけられず、Legal & IP部門とエンジニア部門との間で不必要なやりとりが発生していました。加えて、オンラインフォームで依頼を受けた後の依頼者とのやり取りは電子メールで行っていたため、後々振り返って改善を行うことが難しい状況でした」

限られた人員で、共創するパートナー企業との契約をスピーディーに進めるためには、依頼・申請~依頼者とのやり取りを一気通貫する仕組みの導入が必要不可欠でした。

すべての要件を満たしていたDocusign CLM

契約管理の効率化を実現するために、同社は契約ライフサイクル管理システム(CLM)の検討に着手しました。選定のポイントについて、木下氏は「エンジニアが必要とする情報にすぐにアクセスできる検索の容易性や、問い合わせ対応の迅速化を図るステータス管理に加え、既存のフローを生かせる柔軟性を重視しました。運用が変わると、新たな方法の習得に手間がかかり、混乱を招く恐れがあるからです。また、すでに当社で導入していたDocusign eSignatureとのシームレスな連携もポイントとなりました」と説明します。複数のソリューションを比較検討した結果、すべての要件を満たしていたのが「Docusign CLM」でした。

コスト面でも優位性があったと木下氏は付け加えます。「Docusign CLMは、ユーザーの利用権限に応じたライセンス形態なので、コストを最適化し、必要な人に適切な権限を付与することで従業員満足度の向上にもつながります」

エンジニアの「導入してほしい」の声が採用の決め手に

CLMの導入に向けて約1カ月にわたりトライアルを実施し、Legal & IP部門とともに、エンジニア部門も実際に使用しながら評価を行いました。Legal & IP部門の実務者の目線に加え、契約締結に要する工数が削減されたことによるエンジニアからの好意的評価が、最終的な採用に結び付きました。

そして2022年1月、 同社は契約管理を刷新するためにDocusign CLMの採用を決定しました。導入プロセスでは、ドキュサインのプロフェッショナルサービスおよびソリューションエンジニアリングチームによるサポートのもと、同社の業務に合わせてフローのカスタマイズが行われました。

「既存のフローを大きく変えることなく、ボトルネックを解消し、効率化を図ることができました。ドキュサインの担当チームは当社の視点に立ち、Docusign CLMの柔軟性を生かしつつ、細かい要望にも応えてくれました」(木下氏)

Docusign CLMの本稼働から約1年が経過した現在、「契約が今どの状態にあるのか、例えば『エンジニアのチェック待ち』『カウンターパーティーが確認中』といったステータスやタスクが可視化され、理想に近い形での契約管理が可能になりました。同時にLegal & IP部門のどの担当者が問い合わせを受けたのかをプラットフォーム上で確認できるので、迅速にフォローを行うことができ、対応が遅れてしまうリスクの抑制も図れています。また、契約に関する問い合わせが減り、コミュニュケーションコストの削減にもつながっています。さらに、検索性が向上したことにより、エンジニアは自分が担当している契約のステータスを簡単に把握できるようになりました。『更新』『終了』などのステータス通知が自動で送信される点も、管理の工数削減につながっています」と木下氏は話します。

これまで分断されていたワークフローをDocusign CLMで一元管理できるようになったことで、契約管理の効率化が進み、研究開発のスピードアップや同社が掲げるビジョン「Mobility to Love, Safety to Live」の実現にも寄与しています。

今後は幅広い契約ニーズへの対応と契約プロセスのさらなる改善を検討

日本、米国、英国の3拠点にDocusign CLMを展開し、グローバルで契約管理業務の標準化を図るとともに、幅広い契約ニーズに応えるための基盤を構築したウーブン・バイ・トヨタ。「(契約が)検索しやすくなった」といった声が上がるなど、社内の評判も上々だといいます。

今後の展望について、木下氏は次のように語ります。「検索性の向上やステータス管理により、契約がスムーズに行え、研究開発が速やかに進められるようになりました。今後は、共同研究や業務委託などの契約だけでなく、より幅広い文書への対応も検討していく予定です。また、蓄積された属性やステップなどのデータを基に、既存の契約プロセスの課題を分析し、改善に向けた取り組みも進めたいと考えています。当社にとって、Docusign CLMの果たす役割がますます重要になっていくことを期待しています」

※掲載情報は取材当時(2024年6月)のものです。